2021.01.18 - 2021.01.31

佐藤圭司 Keiji Sato
太陽の沈まぬ国

佐藤圭司 Keiji Sato「太陽の沈まぬ国_1」

佐藤圭司 Keiji Sato「太陽の沈まぬ国_2」

佐藤圭司 Keiji Sato「太陽の沈まぬ国_3」

【太陽の沈まぬ国】

 日本では平成から令和に変わったその瞬間、僕はバルセロナでサンツ駅から地下鉄へ乗り換へ、パラ・レル駅に向かうところだった。スペインではサマータイムが実施されているので、日本時間からマイナス7時間が現地時間になる。つまり令和になった瞬間はまだ4月30日の17時だった。
 日本を出発したのは4月26日、アエロフロートでモスクワに向かった。連れはいない。モスクワまで約10時間の孤独な旅だ。途中北極圏を通過するその窓の下は、どこまでも真っ白だった。モスクワでトランジットするのだが、シェレメーチェボ空港の評判が良くないと聞いていた。トランジットのセキュリティチェックに時間が掛かり、乗り遅れることもあるとか。しかし、それは杞憂だった。税関職員がパスポートを見た瞬間にフリーパスのごとく通過できた。他の人はそれなりに時間が掛かっていたので、これは日本のパスポート力のお陰だなとありがたかった。

 バルセロナ空港に到着したのは現地時間の23時だった。「太陽の沈まぬ国」ではあるが、もちろん太陽は沈んでいた。タクシーに乗り、宿の前に到着したのは日付が変わる頃だった。建物の中に入る入り方が解らない。この日の宿は民泊なので普通のアパートメントに入っていくのだが、セキュリティで入れないのだ。事前の予約時にもらったメールには特に説明はない。僕のiPhoneにはヨーロッパ圏で使用可能なSIMが入っている。データ通信のみ可能なSIMが入っているはずだったが、手違いで通話可能なSIMになっていた。そのお陰で民泊のオーナーに電話をすることが出来、無事に入室できた。手違いに助けられた。部屋に通されると、キッチンでオーナーの女性が友人の女性3人と飲んでいた。挨拶をして自分の部屋に入りすぐにシャワーを浴びる。水が硬水なのでシャンプーする髪がキシキシする。旅の疲れもあり早く寝たかったが、キッチンの笑い声が午前3時頃まで聞こえていた。そうして僕の「太陽の沈まぬ国」スペインの旅が始まった。

 バルセロナで最初に向かったのはサグラダ・ファミリだ。日本からネットでチケットを予約しておいた。普通に並ぶと3時間待ちになるらしい。実際、チケットを求める人であふれかえっていた。そこを手始めにサン・パウ病院、トーレ・アグバール、バルセロナ凱旋門、カタルーニャ音楽堂、グエル公園、カサ・デ・ラス・プンシャス、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、カサ・アマトリェール、グエル邸・・・とバルセロナの建築美を数日間掛けて見て回った。もちろんスナップをしながら。

 その後、高速鉄道AVEでマドリードに移動した。マドリードの宿も民泊だ。部屋に入ると男が一人Macで仕事をしていた。一通り部屋のルールの説明があり、「このあとオレの友達が来て飲むが気にしないでくれ」と言われた。僕は荷物を解いてすぐにマドリードの街を散策し、バルでピンチョスとセルベッサを楽しみ、夜、部屋に戻った。複雑な鍵の開け方を思い出しながら・・・鍵を奥まで押し込みながら右に3回転、左に2回転、そのままノブを回しドアを押す・・・ドアが開き中に入るとその正面のソファーに宿の主の男、その隣に別の男が2人。3人とも上半身裸で酒を飲んでいた。「オラ」とあいさつをして自分の部屋に入り、そういうことかと納得した。また、別の夜、トイレに起きるとソファーにヤバイ感じの若い男が寝ていた。起こさないようにそっとその前を通り過ぎ、用を済まし、再びその前を通り自分の部屋へ戻った。帰国まで、僕の*は無事だった。

 その旅から1年半、コロナ禍で発表できずにいた写真を、再びの非常事態宣言中ではあるものの、今やっとここに展示できた。しかし、どこにいても同じような写真しか撮らないな、イヤ撮れないな。他に芸がない言い訳を個性ということにしておこう。この旅で変わったことは、ハモン・セラーノとパエリアが好物になったこと。
もうしばらく海外に行くのは無理だろう。せめて安いワインを飲みながら生ハムをつまんで「太陽の沈まぬ国」の空を思うことにしよう。


【主な写真展】
2001年 「僕のグラフィティ ~ポップアートな街~」 キヤノンサロン 銀座、仙台、札幌、大阪
2003年 「The Filmed Feeling」 PlaceM
2005年 「Through The Smoked Glass」 コニカミノルタプラザ
2007年 「ノッポの視線」 PlaceM
2007年 「東京シアター」 新宿ニコンサロン
2008年 「東京シアター ~リアル or フェイク~」 コニカミノルタプラザ
2009年 「東京シアター ~R・P・G~」 PlaceM
2009年 「NAWABARI」 PlaceM
2010年 「新宿スターレット★ミ」 PlaceM
2010年 「黒砂」 M2gallery
2011年 「渋谷チャンネル」 M2gallery
2012年 「夜が射す」 M2gallery
2013年 「新宿スターレット★★」 M2gallery
2013年 「True Face」 M2gallery
2014年 「Old Fashioned」 TokyoLightroom
2014年 「東京街景色」 M2gallery
2014年 「閃閃台北」 PlaceM
2015年 「バンコク街景色 1」TokyoLightroom
2015年 「The BAR -Shinjuku-」RED Photo Gallery
2015年 「張碓の景色」PlaceM
2015年 「バンコク街景色 2」TokyoLightroom
2016年 「バンコク街景色 3」TokyoLightroom
2016年 「東京シアター」RED Photo Gallery
2016年 「バンコク夜景色」RED Photo Gallery
2016年 「バンコク街景色 4」TokyoLightroom
2016年 「バンコク夜景色(2)」RED Photo Gallery
2016年 「バンコク街景色 5」TokyoLightroom
2016年 「バンコク色景色」PlaceM
2017年 「東京Days」RED Photo Gallery
2017年 「東京Days(2)」RED Photo Gallery
2017年 「忍路の景色」PlaceM、RED Photo Gallery
2017年 「バンコク夜景色(3)」RED Photo Gallery
2018年 「NAWABARI -Bangkok-」TokyoLightroom
2018年 「東京Days(3)」RED Photo Gallery
2018年 「バンコク街景色 6」Cue・Brick
2018年 「Bangkok」RED Photo Gallery
2018年 「Bangkok」PlaceM
2018年 「CUBA」RED Photo Gallery
2019年 「東京Days(4)」RED Photo Gallery
2019年 「桜にゑびす」RED Photo Gallery
2019年 「張碓から忍路へ」PlaceM、RED Photo Gallery
2019年 「黒砂」RED Photo Gallery
2020年 「東京Days(5)」RED Photo Gallery
2020年 「地熱」RED Photo Gallery
2020年 「サバイサバーイ」RED Photo Gallery


【主なグループ展】
2011年 「Shinjuku Starlet」『INTERCAMBIO DE MIRADAS』 RSF Gallery スペイン
2011年 「Shinjuku Starlet」『Four weeks of Japanese Photographers』 Gallery LUX 韓国
2011年 「渋谷チャンネル」川越美術館
2012年 「PlaceM collection」 M2gallery
2015年 「Tokyo City View」 Taipei 台湾
2015年 「MEMBERS’OPENING EXHIBITION“RED”VOL.01」RED Photo Gallery
2017年 「Trade Talks Tokyo-Nebraska Photography Exchange Exhibition」アメリカ
2017年 「RED Photo Gallery 開廊2周年記念企画展」RED Photo Gallery
2017年 「PlaceM 30周年記念企画 コレクション展」PlaceM
2018年 「RED Photo Gallery 開廊3周年記念企画展」RED Photo Gallery
2019年 「RED Photo Gallery 開廊4周年記念企画展」RED Photo Gallery
2020年 「RED Photo Gallery 開廊5周年記念企画展」RED Photo Gallery


【写真集】
2014年 閃閃台北(自家版)
2015年 東京街景色(自家版)
2015年 The BAR -Shinjuku-(自家版)
2015年 張碓の景色(自家版)
2016年 東京シアター(自家版)
2016年 バンコク夜景色(自家版)
2016年 バンコク色景色(自家版)
2017年 忍路の景色(日本カメラEvery Photo Books)
2019年 張碓から忍路へ(PlaceM)
2020年 サバイサバーイ(PlaceM)

【写真集、プリント ショップ】
 Book & Print SHOP