2022.03.14 - 2022.03.27

薈田純一 Junichi Wajda
SESSHU GARDENS

薈田純一 Junichi Wajda「SESSHU GARDENS_1」

薈田純一 Junichi Wajda「SESSHU GARDENS_2」

薈田純一 Junichi Wajda「SESSHU GARDENS_3」


室町時代の画僧・雪舟は六点の国宝を含む五十点あまりの真筆を残しているが、造園においても仮山水の築造に新基軸を打ち出し豪放で閑雅な庭園を残している。しかしこれらには雪舟作庭のはっきりした史実が残るものはなく、信憑性があるのは十指に満たない。

だが真偽のほどが定かでなくても、あるいは時が庭園の形を変えていたとしても、僕にとって庭がREAL(本物)であることよりLIVE(活きている)であることの方が重要だった。木々の息吹を吸い、観て、感じて、雪舟の空間に埋没できるからだ。

雪舟の庭は難解だといわれる。彼の水墨画と同じようにその茫漠とした凄みに、なにを見出せばいいのか解らなくなる。それは室町時代の空間様式を共有していないことも理由の一つだろう。だが雪舟の庭は鑑賞者の「見当識」を問う庭だからではないのか。おまえは何処から来て、何処にいて、何処へ行こうとしているのかと。

観る者を庭園空間に惹き込む怖いような力、それはこの庭に張り巡らされた幾つもの視線のベクトルである。その力と方向をカメラで追ったらどうなるか。一つの視点の考えを捨て、多視点で複眼化した僕の考えの先にようやく庭の全貌が浮かんで来た。

2021年11月6日 薈田純一

プロフィール
薈田純一(わいだじゅんいち)

1963年神戸市生まれ、1988年立教大学卒業。外国通信社の写真記者として取材に従事する。小説、書籍、書棚をテーマに著名人の書棚や書店、図書館の書棚作品を撮影、見当識を問う空間として雪舟の庭にとりくむ。

♦主な個展:2011年 表参道画廊 「Book Shelf 松丸本舗の位相」、2011年 スパイラルホール「松岡正剛の書棚 松丸本舗の位相」、2012年 プレイスM「立花隆の書棚」、2013年 ペンタックスフォーラム「書棚」、2014年 ギャラリースペースキッズ「書棚」、2019年 リコーイメージングスクエア東京「新・小説のふるさと」

♦主なグループ展:2016年 エプサイト「インクジェットの本流」JPS会員によるプリント競演展、2020年 エプサイト「絶対鑑賞写真展」エプサイトギャラリー企画展

♦主な撮り下ろし、著書に『松岡正剛の書棚』『立花隆の書棚』(中央公論新社)『타치바나 타카시의 책장』(文学トンネ社)『アイデアNo.379 ブック・デザイナー鈴木一誌の仕事』(誠文堂新光社)

♦日本写真家協会会員。